南大河原の山ノ神(京都府相楽郡南山城村南大河原)

2012年5月に恋志谷神社に参拝したおり、神社の清掃をされていたご夫婦にお会いし、山ノ神に関する情報を教えて頂いた。その中で私が強く関心を持ったのは、山ノ神のお供えものを乗せるため、竹で台を作られるというお話だった。同様の事は、滋賀県野洲市南桜でも行われている。ぜひ拝見したいと思い、お祭りの日をお尋ねしたら、12月10日とのこと。その日を手帳にメモしたのだった。

恋志谷神社の裏山

南大河原地区では4ヶ所で山ノ神をお祀りされている。
その内1ヶ所は、恋志谷神社の社殿が並ぶ裏山の斜面にある。




裏山にある山ノ神の祠

恋志谷神社の裏山に鎮座する山ノ神(祠が二体ある)




ケヤキの根本が山ノ神の祭祀場

もう一ヶ所は、恋志谷神社の西にそびえる
ケヤキの根本

かまど

社殿の前、西隅にあるかまど
このかまどで、山ノ神にお供えするゴクサン(御飯。『御供さん』?)を炊く。

あと2ヶ所は南大河原地区の東西はずれにある。山ノ神に、道祖神的な御利益を期待する祀り方の様に思えた。



12月10日、私が恋志谷神社にお邪魔したのは15時少し前。今年5月にお会いしたご夫婦と、祭に参加される男性4名が段取りを話されていた。そして、小学生の男子とそのお父さん2名がメンバーに加わった。少し前までは小学校4年生から高校1年生の男子だけで山ノ神の祭を行ったという。少子化でその年代の男子が揃わなくなり、近年大人の男性も加わるようになったとのこと。
まず、神饌棚を作るための竹を切り出しに行く。神社の階段の手摺りにする竹も併せて切り出してこられた。神饌棚は合計4台作る。1台につき、脚が4本、台部が12本必要だ。さらに竹の箸を4組つくる。ノコギリとナタで手際よく作業が進む。
暖められた缶コーヒーを参加者に配られた後、いつの間にかご婦人の姿が見えなくなった。南大河原地区でも、女性は直接山ノ神の祭には参加されないようだ。(あっ、私まであったかい缶コーヒーを頂き、ありがとうございました。伊賀市から車でここまで来る途中雪がぱらついていた寒い日でした。)
椿の葉を取りに行った男性は、枝ごと取ってきて大きなのを選んで葉を引きちぎり、水洗いされた。椿の葉は神饌台1台につき12枚敷きつめる。(十二という数にこだわりがあるようだ。)あと、ゴクサンをお供えする者は、口に椿の葉を咥えて行う。奈良の柳生だったか、榊の葉を口に咥えて一切無言で行う神事があったのを思い出す。

ゴクサンの盛り付けに使う竹の箸

竹箸
椿の葉

椿の葉



西のはずれに設置された神饌棚

西外れの山ノ神と神饌棚
神饌棚アップ

神饌棚アップ

日が暮れないうちに神饌棚を組んでおく。
神饌棚の脚は、三分の一くらいの処に節を残してあるので、切り込みを入れても二つに割れない。




ゴクサンを炊く

一升二合の米(ゴクサン)を炊く。
炊きあがって薪を取り出しているところ。日が暮れて暗くなり、懐中電灯は必需品。




盛り分けられたゴクサン

盛り分けられたゴクサン
4ヶ所の祭祀場に持っていき盛り付ける。
ゴクサンを神饌棚に盛る

椿の葉を口に咥え、竹の箸でゴクサンを供える主役の少年。
(ケヤキの根元の山ノ神)

山ノ神は四ヶ所あるので、お供えは手分けして行われました。山ノ神にお供えした後、供えた人もゴクサンを食す。食す前に「あつついっぱい」と言うのが決まりだという。「熱つ、一杯」の意と思われる。「ゴクサンが冷めていても、言わないといけない。」そうだ。境内に戻って、私もゴクサンを頂いた。お米を炊いただけの、すなわち御飯だけなのだが、なぜか味わい深かった。昔は地区の1件1件からゴクサンにするお米を少しづつ集めて回ったそうだ。この後、恋志谷神社境内にある集会所で、簡単ななおらいをされるという。ここで私は皆さんにお礼を言って、帰宅の途についた。



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home   作成:2012.12.16